あれからの日乗

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女旱りの中、矢鱈と積極的な女に出会った。

会う前に、女は通話による事前面談を申し出、私もそれ自体は快諾したのだが、女の詰まらぬ話に適当に相槌を打っている間に、十五分の通話予定が一時間に伸び、付き合ったら休みの前日はお互いの部屋に行ってお泊りして、朝になったら一緒にお出かけしたい、なぞ女の述べる欲望の数々に面倒臭さを感じた私は、その時点で女に連絡するのを止めたのだが、休みの直前になって女の方から会いたいと連絡を受け、渋々会うことにしたのである。

ドラッグストア前という、妙に慣れた感じの待ち合わせ場所を女から指定された。

現れた女は、醜女とまではゆかぬが、私の好みではなく、話していても全く笑わない辺りが不気味であり、どことなくメンヘラ臭がした。

食事の会話はさして盛り上がることなく終わり、このまま解散してフェードアウトかと思いきや、初対面の私に平然と密着して指を絡ませて来た女は、買い物に行きたいと言い、私は興味の無い石鹸の数々を前に棒立ちしていた。

その後も動物好きを称する女は、兎カフェに行きたいと言い出し、獣臭い檻の中で女と一緒に過ごした私は、一刻も早くこの女から解放されることを望んだ。

兎には何度もズボンの上から噛み付かれ、小学校の兎小屋の獰猛なクソ兎が思い出された。女は兎の餌付けを楽しんでいたが、狭い檻で飼い殺しにされている動物を見て何が楽しいのか、最後まで私には分からなかった。

女は鯛焼きを半分こしたい、アイスを食べたい、プラネタリウムを見たい、クレーンゲームをしたいなぞ次々に言い始め、私は、女が前の男と回ったと思われるデートコースを連れ回された。

普段から裸眼の私は眼鏡を持ってきておらず、プラネタリウムでは星がさっぱり見えなかったが、おかげで寝て過ごすことができた。

フルバージョンのデートを堪能させられた私は心身疲弊し、帰途に着くや否や倒れ込み、女は、その後も頻りに私に連絡を入れ続け、挙句には私の童貞を貰いたい、なぞ言い出す始末で、私は女の申し出を固辞する運びとなった。

私は単純に女と付き合いたいという慾を満たしたいのではなく、メンヘラ予備軍の女と心中する積もりは無い。また、ここまで拗らせた以上は、そう易易と童貞をくれてやる積もりも無いのである。

つくづく、拗らせた男とは厄介なものである。