あれからの日乗

脱毛記 (3)

初の全身光脱毛へ行った。

私は断然レーザー派だが、産毛には蓄熱式光脱毛の方が良いと云う記述もあり、一度試しておきたかったのである。

受付の女が電話予約の段階から段取りが悪く、予約後にも何度も留守電を入れてきて、この女大丈夫か、と思った。

折り返すと、男の施術者の予定だったが、男が熱を出したため代わりに女自身が施術したいとのこと。この女の年齢は電話では分からぬが、一応は女なので二つ返事で承諾した。

一度帰宅してシャワーを浴び、下の穴まで念入りに洗浄を行い、準備を整え、閑静な住宅街を真っ直ぐ進むと、やや広めのアパートに看板を携え、辛うじてその看板からエステサロンと判別できる一室へと至った。

呼び鈴を鳴らすと、電話を掛けてきた女に出迎えられたが、やはりと云うか相手は婆であり、婆と狭い部屋で二人きりになった私は少し恐怖を覚えた。

まつ毛長いですね、イケメンですね、毛は彼女に剃ってもらったんですか、なぞ私のことを矢鱈と褒めてくるも、婆に褒められても全く嬉しくない。

うちは芸能人が多く来る、よく芸能人の所へ出張に行っている、なぞ云う営業トークを聞き流し、寝た振りをしてやり過ごそうとするも、容赦の無い婆の雑談が続いた。

終いには店舗lineが壊れていて、婆の私用lineで次の予約を受け付けたいなぞ、訳の分からぬことを言い出し、さらに電話を何度も掛けて申し訳無かったと、お詫びに握り飯まで渡された。

握り飯が婆の手作りでなかったことが唯一の救いだったが、私は玄関先に置かれた納豆巻を食べるような乞食ではないし、自身はウイルスが怖いなぞ頻りに言っている割には、客に密閉されていない食品を渡す配慮の無さが気持ち悪く、そのままゴミ箱に捨てた。

二回セットの契約であり、再度この婆の下へ行かねばならぬと思うと憂鬱だが、施術の腕自体は確かであり、レーザーでは対象外の顔面上部まで打ってくれたのは有り難かった。

光脱毛による物理的な痛みはレーザーに比すると皆無であったが、精神的なダメージが大きかった。個人経営サロンは事前によく調べてから使うよう心掛けたい。

このように、行き過ぎた好意は恐怖でしかない、と云う教訓は、恐らくは恋愛においても有用なものとなろう。