あれからの日乗

life

六、業苦

こんな際に、その存在を思えば――その存在さえあれば、他のことはすべてがどうでもよい、と達観できるまでにのめり込み、すがりつける対象となる何かがあれば、どれだけ救われることであろう。(西村賢太「蠕動で渉れ、汚泥の川を」) 彼はフリーターになった…

五、一日

大丈夫だ、まだ、大丈夫なはずだ――。​(西村賢太「羅針盤は壊れても」) 彼の一日は、便所掃除から始まる。クリーナーを半分に千切り、便座の隅々まで拭き取った後に紙片を捨てる。 モップ掃除と窓拭きを済ませ、新人の彼がか細い声で挨拶を終えると、水沢と…

四、人生を半分降りる

「貫多の持病は、所詮、一生治る見込みの望めぬ廃疾のようなものであるらしい。」(西村賢太「廃疾かかえて」) いったいにコミュ障と云うものは生き辛く、発達障害を抱えているのであれば尚更である。彼は物心付いた時点で既に落伍者の烙印を押されていたも…

三、廃疾かかえて

しかしそれにしても、こんなふやけた、生活とも云えぬような自分の生活は、一体いつまで続くのであろうか。こんなやたけたな、余りにも無為無策なままの流儀は、一体いつまで通用するものであろうか。(西村賢太「苦役列車」) T大に入るまでは、そのことに…

二、生き辛さ

その墓前にいるうち、気持が吹っきれたようになり、「もういいや、最後の一踊りで」と呟いた。自業自得の積み重ねで、どうせこの先、人並みの社会生活なぞ送れるはずもないのである。(西村賢太「墓前生活」) 彼は一人で遊ぶのが好きな少年だった。往時テレビ…

一、あれからのbms

かつてbmsに人生を捧げた男が居た。 その前に、まずはbmsとは何か説明しておかねばなるまい。 bmsとは落ちてきた音符に合わせて鍵盤を押す、ただそれだけの単純な音楽ゲームだ。 このゲームには単純ながら終わりが無い。プレイヤーは譜面をクリアすることで…